近視／遠視／乱視
近視
網膜より前にピントが合っているため、近くは見えますが遠くがぼやけます。
眼球の長さが長かったり、角膜や眼の中のレンズ（水晶体）の屈折力が強いと近視になります。
近視は治りますか？
眼球の長さ（眼軸長）が長くなり、近視になっている場合は、身長が伸びても元に戻すことができないのと同様、治すことはできません。
調節力が強い若い方では、目の中のピントを合わせる毛様体筋の緊張で、見かけ上近視になっていることもありますので、近視の初期や、急に進行した場合は毛様体筋の緊張を取る目薬を使用し、様子を見ることもあります。
レーシックは角膜をレーザーで削って、目の屈折力を変え、裸眼視力を向上させる治療です。
眼軸長を変えるわけではありませんので、近視が根本的に治っているとは言えません。
近視の人がなりやすい病気
① 網膜裂孔／網膜剥離
近視の人は眼軸長が伸びた結果、網膜の周辺が薄くなり、穴が開くことがあります。
その穴から網膜の下に水が入り込むと網膜が剥がれて網膜剥離という状態になることがあります。これらの病気は通常の眼科検査では発見することができませんので、近視の強い方は瞳孔を広げて網膜の端の方まで検査する、散瞳検査を受けられるとよいでしょう。
② 緑内障
緑内障とは眼の奥の視神経が障害され、視野が狭くなる病気です。近視の人は眼軸長が長くなる過程で視神経が障害され、緑内障になる可能性が高くなると言われています。眼圧が低くても発症することが多いため、４０歳を過ぎたら定期的に検査を受けられると安心です。
③ 脈絡膜新生血管
網膜の中心の黄斑部に新生血管ができる病気です。視野の中心が見えにくくなり、視力低下を引き起こします。網膜の下には脈絡膜という血管が豊富な膜があり、そこから新生血管を生じます。新生血管は普通の血管と異なり、出血や血液の水分が漏れて網膜に腫れを起こし、その結果視力が低下します。治療はVEGF阻害薬の注射を行います。
近視を予防するには？
近視の原因には遺伝と生活環境があります。片親が近視の場合は２倍、両親が近視の場合は８倍近視になりやすいと言われています。また、生活環境も関係すると言われています。
近視の発生や進行のメカニズムは完全に解明されているわけではありませんが、ひとつの説として、「調節ラグ理論」があります。近くを見るときは眼の毛様体という筋肉を働かせて網膜にピントを合わせています。これを調節と呼びますが、近業を続け、眼が疲れてくると
調節が十分に働かず、網膜の後にピントが合う状態になります。この状態に対応するため、眼球の長さが前後に伸びて近視が進行するといわれています。
また、屋外でよく遊ぶ子の方が近視になりにくいと言われています。これは太陽光に含まれる紫色の光（バイオレットライト）が関係しているのでは？と、ある大学で研究がなされています。
以上のことから、近くを見る作業を長時間しない、特に小さい画面のゲームをしない、できるだけ屋外で遊ぶなどに気を付けて頂くとよいでしょう。
また、近視進行を予防する目薬もありますので、ご興味のある方はこちらをご覧下さい。
眼鏡を使用する目安は？
その方が重視する距離により眼鏡が必要か不要かは変わってきます。
車の運転をされる方は普通自動車免許で両眼で0.7、かつ片眼ずつで0.3以上です。さらに、夜間に運転をされる方は少なくとも両眼で1.0程度には合わせておいた方が良いです。
学校で黒板の字を見るためには最低でも両眼で0.7は必要です。
遠視
ピントを合わせる毛様体筋を休めた状態（調節力を働かせていない状態）で、眼に入ってきた光が網膜より後に焦点を結んでしまう状態です。
遠くがよく見える眼と勘違いされることがありますが、実際には遠くにも近くにもピントが合いません。調節力が十分にある若い方は、調節力を使って網膜にピントを合わせることができますが、年齢とともに調節力を使ってもピントを合わせられなくなり、視力低下を自覚します。また、常に調節力を使っているため、眼に負担がかかり眼精疲労になりやすいです。
遠視の人がなりやすい病気
①内斜視／弱視
赤ちゃんは眼軸長が短いためほとんど遠視の状態です。成長とともに眼軸長が伸びて、遠視が減少していきます。しかし、なかには遠視が強い状態のままのお子さんもいらっしゃいます。お子さんの視力は毎日物を見ることで発達しますが、網膜にはっきりとした映像が映らないと、視力が発達せず、「弱視」と言われる状態になります。また、遠視が強いと、強く調節が働いて眼が内側に寄る「内斜視」と言われる状態になります。「弱視」や「内斜視」は早めに眼鏡をかけての治療が必要です。
②閉塞隅角緑内障
遠視の方は眼軸長が短く、眼の中を循環するお水（房水）の出口である「隅角」が狭くなっている場合があります。隅角が狭いと房水が眼の中に溜まり眼圧が急激に高くなって眼の痛みや視力低下が起こることがあります。
それ程頻度が高いわけではありませんが、一度起こってしまうと失明することもある病気ですので、急な眼痛、視力低下、吐き気などを自覚されたら、すぐに眼科を受診なさって下さい。
乱視
乱視は眼に入る光が方向によってバラバラに焦点を結ぶ状態です。たとえば、タテ方向の光は網膜の前に焦点を結び、ヨコ方向の光は網膜の後に焦点を結ぶという具合です。
その結果、物が二重に見えます。主に角膜のカーブが方向によって異なることが原因です。
例えてみると、乱視のない方の角膜がサッカーボールの側面のような形状とすると、乱視の方の角膜はラグビーボールの側面のような形状をしているイメージです。
乱視は全くない方がめずらしいくらいで、眼鏡で矯正する必要のない人も含めると、ほとんどの人に乱視があるといってもよいです。
乱視で見つかる病気
急に乱視が進行してきた場合、角膜が前方に突出する「円錐角膜」、結膜の組織が角膜に入ってくる「翼状片」、水晶体が濁る「白内障」が原因であることがあります。
