緑内障の症状と治療
緑内障とは?白内障と違うの?
緑内障と白内障は名前が似ていても全く別の病気です。
白内障は眼の中のレンズが濁る病気ですが、緑内障は眼の奥の視神経が障害され、見える範囲が狭くなっていく病気です。
視神経は眼で見た視覚情報を脳に伝える大切な神経で、この神経がなければ網膜で光を感じても、脳で認識することはできません。視神経はおおよそ120万本の神経線維の束で、年齢とともに少しずつ減っていきます。しかし、通常は神経線維の減るスピードは非常にゆっくりのため、一生を通じて視野が欠けることはありません。緑内障では神経線維の減るスピードが早いため、少しずつ見える範囲が狭くなり日常生活に支障をきたすのです。
人間ドックで「視神経乳頭陥凹拡大」「網膜神経線維束欠損」を指摘されたら
視神経乳頭とは眼の奥にある視神経の出口のことです。視神経乳頭の凹みが大きいことを「視神経乳頭陥凹拡大」といいます。生まれつきの場合もありますが、緑内障でも凹みが大きくなります。「網膜神経線維束欠損」とは網膜の神経線維が一部欠損したもので、眼底写真でみると欠損した部分が周囲の網膜よりやや暗く写ります。こちらも緑内障の可能性がありますので詳しい検査が必要です。
当院ではご予約いただければ、視力、眼圧、網膜の写真、網膜の厚さを調べるOCT検査、視野検査を1時間~1時間半で行い、その日に結果を説明しております。
緑内障の原因
緑内障の原因はすべて分かっているわけではありませんが、明らかな原因となるのは眼圧が高いことです。
眼圧とは眼の硬さで正常値は10~21mmHgの範囲です。眼圧が正常を超えると、視神経が圧迫されて障害を起こしやすくなります。
また、強い近視の方に緑内障が多いのは眼軸長(眼球の前後の長さ)が長くなる変化に伴い、視神経が障害されることが原因とされています。
その他、加齢、視神経の血流が悪い、遺伝的な要因などもあります。
緑内障の症状
初期には両眼または片眼の鼻側の感度低下から始まり、少しずつ広がります。両眼で見ていると左右で補い合うこともあり、見えにくい部分に気が付きません。その後鼻側から中心、その周囲に広がり、末期には中心のみ見えます。
それでも治療しないと失明に至ります。緑内障は少しずつ進みますので、気がついたときにはすでに進行してしまっているということがよくあります。
緑内障のタイプ
緑内障は眼圧の程度や原因により、いくつかのタイプに分かれます。
正常眼圧緑内障 - 眼圧が正常のタイプ
視神経が耐えられる眼圧は人それぞれ異なっています。眼圧は正常範囲(10~21mmHg)でも視神経がそれに耐えられなければ神経線維の減るスピードは速くなり、視野が狭まってしまいます。これを正常眼圧緑内障といいます。
日本人はこのタイプの緑内障が多く、緑内障全体の約70%と言われています。
健診などで眼圧を測定しても異常値が出ませんし、緑内障は初期には症状が分かりにくいので、見つかりにくいタイプと言えます。
原発閉塞隅角緑内障 - 房水の通り道が狭いタイプ
眼圧は眼の中を循環している房水と呼ばれる液体の量で決まります。
房水は虹彩の付け根にある毛様体で作られて、虹彩と角膜後面の間の「隅角」を通り、線維柱帯というメッシュ状の隙間からシュレム管へと排出されます。
房水の通り道である隅角が狭いと、房水が眼の外へ排出されず、必要以上に房水が眼の中に溜まった結果、眼圧が上がります。
眼圧が急激に上昇する「急性閉塞隅角緑内障」は急性緑内障発作とも言われ、激しい眼痛、頭痛、吐き気を伴うタイプです。
症状があまりにも激しいため眼科ではなく内科を受診されることもあります。
放置すると視神経障害が急激に進むため、緊急で眼圧を下げる治療が必要となります。
隅角が徐々に狭くなる「慢性閉塞隅角緑内障」は、眼圧もゆっくり上昇するため、なかなか気づかれにくく、自覚症状が出たころには視野障害がかなり進行していることもあります。
原発開放隅角緑内障 - 房水の出口が目詰まりしているタイプ
房水の通り道である「隅角」は広いのですが、隅角にある線維柱帯というメッシュ状の組織が目詰まりして、房水が排出されにくいタイプです。
眼圧はゆっくり上がるため、自覚症状も出にくいタイプです。健診や他の病気などで眼科を受診した際に眼圧が高いことを指摘され、偶然見つかることもあります。
続発緑内障 - 他の病気に伴って起こるタイプ
「ぶどう膜炎」という眼の炎症や硝子体出血、糖尿病網膜症、ステロイド点眼や内服、外傷、など他に原因があって発症する緑内障です。
発達緑内障
生まれつき隅角に異常があり、眼圧が上昇します。
乳幼児の時から発症する場合と、成長に伴って遅れて発症する場合があります。
緑内障の検査
眼圧検査
当院では2種類の眼圧計を使用しています
①非接触型眼圧計
眼に空気を当てて、角膜がどれくらい凹んだかで眼圧を測定します。
手軽に測れますが、眼に力が入ったり、睫毛に当たったりすると実際より高めに測定されてしまうこともあります。
②ゴールドマン眼圧計
点眼麻酔をしてからプラスチックのチップを角膜に当てて測る方法です。
非接触型に比較して精度が高いと言われます。
細隙灯顕微鏡検査
光を当てながら顕微鏡で主として眼の前の方を見る検査で、前房の深さ(浅いと隅角閉塞の可能性あり)、白内障などの他の病気もないか観察します。
眼底検査
視神経の出口である視神経乳頭には通常凹みがありますが、その凹みが大きいと(視神経乳頭陥凹拡大)緑内障の疑いが出てきます。
視神経乳頭を詳しく観察し、緑内障の変化がないか見ます。
その他網膜に視野障害をきたす他の病気が隠れていないか診察します。
隅角検査
点眼麻酔をした後、眼に鏡のついた特殊なレンズをのせて隅角が広いか狭いか、癒着しているところはないか、炎症の跡がないかなどを見ます。
OCT(眼底三次元画像解析)/眼底写真
OCTは網膜の断面や網膜の厚さを調べることができる機械です。
緑内障では神経線維の層が薄くなるため、これを測定し、視野検査の結果と比較して対応しているかどうか見ます。
眼底写真は視神経の形状や他の網膜疾患がないか見るための検査です。
OCTと眼底写真は合わせて10分くらいで撮影できます。
視野検査
視野が狭くなっている部分や感度が低下している部分がないか調べる検査です。
片眼を隠し、ドーム状の器械の中に大小さまざまな光が出てきますので光が見えたらボタンを押します。
左右各10~15分で、全部で30~40分かかります。
集中するため非常に疲れる検査ですが、緑内障の診断と経過観察にはとても重要な検査です。
緑内障の治療
現代の医療では、残念ながら見えなくなった視野を回復させる治療法はありません。
緑内障ではこれ以上視野障害を進行させないように、予防する治療になります。
緑内障のすべてのタイプにおいて、科学的根拠のある治療法は眼圧を下げることです。
目薬で眼圧を下げる治療が基本となり、目薬で効果が得られない場合はレーザー治療、手術を選択します。
同じ目薬や治療法でも人によって効果があるもの、ないものがあり、患者さんに適した治療法を考えます。
薬物療法
眼圧を下げる目薬は現在10種類以上出ています。
房水の産生量を少なくする目薬、房水の排出を促す目薬、2種類の目薬が配合された配合剤などがあります。
1種類の目薬で効果が少ない場合は配合剤を使ったり2種類以上の目薬を組み合わせて処方します。
また、目薬だけでは眼圧が下がらない場合や目薬で副作用が出る場合は、一時的に内服薬を使います。
急性緑内障発作では、急いで眼圧を下げる必要があるため、点滴をします。
レーザー治療
2種類の方法があり、いずれも外来で行われる治療法です
①選択的レーザー線維柱帯形成術
開放隅角緑内障に対して行う治療です。
房水の出口である線維柱帯にレーザーを照射して、房水が流れる抵抗を減らして眼圧を下げる方法です。
②レーザー虹彩切開術
急性緑内障発作や発作を起こす可能性の高い方に行う治療です。
虹彩の端の方にレーザーで小さい孔を空けて房水の流れを良くする治療法です。
以前はよく行われていましたが、何年か後に角膜障害を起こす場合があることが分かってきたため、同じ効果のある白内障手術が選択されるようになってきています。
手術療法
眼圧を下げることを目的とした手術で、薬物療法やレーザー治療でも効果がない場合に行われます。
大きく分けて3種類あります
①流出路再建術
線維柱帯にトラベクロトームという器具を入れて切開し、眼圧を下げます。
術後、眼の中に血液が逆流し、一時的に眼圧が上がったり、視力が低下することがあります。
②濾過手術
流出路再建術でも十分に眼圧が下がらない場合や、最初から十分に下げたい場合に行われる手術です。
房水の本来の通り道とは別に排出路を作る手術です。
結膜の下の強膜と呼ばれる部分に強膜の半分くらいの薄さの小さいフラップを作り、その下の虹彩に穴を開けます。
フラップを元に戻して糸で縫い、結膜も縫うと、房水がフラップの隙間を通って結膜の下に排出され結膜に水ぶくれを作ります。
眼圧を下げる効果が高い手術ですが、眼圧が下がりすぎてしまったり、水ぶくれに感染を起こすこともあり、術後管理が非常に重要です。
③チューブシャント術
上記の手術を行っても効果が得られない難治性の緑内障に対して行われます。
用いるインプラントは2種類あり、小さいステンレス製の管で眼内と結膜の下をつなげるものと、プレート付きのチューブを結膜下に入れて眼内から房水を流す方法とがあります。
緑内障でよくある質問
緑内障の予防法はありますか?
A.緑内障に関しては効果的な予防法がないのが現状ですが、喫煙は緑内障の発症率を上げるという研究結果もありますので禁煙されるとよいでしょう。
また、有酸素運動は全身の血流を良くし、運動後の眼圧もやや下がると言われているためおすすめです。
眼圧は正常といわれましたが、本当に緑内障でしょうか?
A.眼圧が正常でも緑内障になる場合があります。「正常眼圧緑内障」というもので、日本人の緑内障の7割を占めます。
眼圧が正常なのに目薬をして眼圧を下げてしまって大丈夫ですか?
A.正常眼圧緑内障の方は眼圧が正常でも視神経が傷ついてしまっているので、視神経を保護するためにはもともとの眼圧からさらに下げてあげないといけません。
どれくらい下げる必要があるかは緑内障の程度や年齢にもよりますが、治療前の20%程度下降すると視野の進行を遅らせることができます。
また、目薬で眼圧が下がりすぎて困るということはありません。
血のつながった家族が緑内障ですが、遺伝しますか?
A.100%遺伝するというわけではありませんが、血のつながったご家族や親戚の方に緑内障の方がいらっしゃると緑内障になる確率は高くなります。
お身内で緑内障の方がおられる方で、特に近視が強い方や40歳以上の方は一度緑内障の検査を受けられると安心です。