角膜障害の症状と治療
はじめに
眼球の黒目の部分を角膜と呼び、実際には厚さ0.5mmの透明な膜です。
角膜は眼球の形態を保つだけでなく、外からの光を通し、水晶体とともに網膜にピントを合わせる働き(屈折)も担っている、非常に大切な組織です。
常に外界と接しているため、異物や乾燥、細菌などの微生物の侵入といった危険にさらされています。角膜には知覚神経が皮膚に比べて密集しており、少しの傷でも痛みを感じやすく、角膜に異常があったことを私たちに教えてくれるのです。
点状表層角膜症/角膜びらん
症状
角膜は5つの層に分かれており、その一番外側の角膜上皮に点状の傷がついてしまうことを点状表層角膜症といいます。ゴロゴロ感、充血、痛みやかすみなどの症状が出ます。角膜びらんは角膜上皮がめくれてしまった状態で、非常に強い痛みを感じます。点状表層角膜症の、よりひどい状態とも言えます。
原因
コンタクトレンズ装用や、ドライアイ、異物、結膜結石、強い紫外線などです。
治療
異物など原因となるものは取り除き、コンタクトレンズも中止します。人口涙液やヒアルロン酸点眼で角膜の傷の治りを助けます。感染の危険性がある場合は抗菌薬の目薬も併用します。痛みが強い場合は、眼軟膏を入れ角膜を保護すると痛みが和らぎます。感染を合併しなければ、後遺症なく治癒します。時々一度治癒した角膜びらんが繰り返し起こることあり(再発性角膜びらん)、その場合は約半年間、就寝前に眼軟膏を入れ、再発を予防します。
角膜潰瘍
原因と症状
角膜に傷がつき、そこに細菌感染を起こしたものです。強い痛みと充血、視力低下を伴います。細菌の種類により急激に進行し、角膜に穴が開くこともありますので、早急に治療しなければなりません。原因は、コンタクトレンズの不適切な使用や外傷などです。
治療とその後
まずは、幅広い細菌に効果のある目薬を頻回に点眼し、就寝前には軟膏を目の中に入れます。飲み薬や点滴を使用することもあります。
角膜潰瘍は治癒しても角膜に濁りを残すことが多く、角膜の中心に濁りが残った場合は、視力が完全には回復しない場合があります。
薬剤性角膜障害
症状と治療
目薬やその中に含まれる防腐剤により、角膜に傷ができます。治療は、原因となっている薬剤を中止し、涙の成分に近い人工涙液を点眼します。緑内障目薬など、完全に薬剤を中止することが難しい場合は、一時的に眼圧を下げる飲み薬を代わりに飲んだり、より角膜にやさしいタイプの目薬に変更したりします。
予防法
眼科で目薬が処方された場合、定められた回数を守って頂くことが大切です。市販の目薬を使用される場合、特にコンタクトレンズをされている方やドライアイの方は防腐剤が入っていないものを選ばれるとよいでしょう。
角膜内皮細胞減少
角膜内皮細胞が減少すると?
角膜の一番内側の層を角膜内皮細胞と呼びます。角膜内皮細胞は年齢とともに減少しますが、
増加することはありません。酸素透過性の悪いコンタクトレンズを長時間したり、手術や感染などで内皮細胞が障害されると、その周囲の細胞が大きくなり、代わりに役割を果たしてくれます。
それでも細胞が減少し続けると、角膜がむくんで白く濁り失明します(水疱性角膜症)。そうなると角膜移植でしか視力を回復させる方法はありません。
検査法
角膜内皮細胞を測定する機械で写真を撮って、1ミリ平方メートルの中にいくつ細胞があるか数えます。正常な人で、2500~3000個/mm2ありますが、500個/mm2以下になると水疱性角膜症の危険性が高まります。コンタクトレンズ検査時に、角膜に血管が侵入している方に対しては、酸素が不足している可能性がありますので、角膜内皮細胞の測定をしております。
実際の角膜内皮細胞の写真。右眼の角膜内皮細胞数は1733/mm2で左より少ない状態です。
一つひとつの細胞も左に比較して大きくなっています。